君の井酒造(新潟県妙高市)
妥協の無い職人魂
経営方針の1つに「惜しみなく手をかける酒造り」を掲げた蔵元に、妙高市の君の井酒造(株)があります。妙高市は、かつて北国街道に面する宿場町として栄えた新井宿があった地域にあたり、君の井酒造(株)の創業は、現在判明している1842年以前とも言われています。
非効率でも山廃仕込にこだわる理由
蔵元の大きな特徴として山廃仕込みがあり、これは、君の井酒造(株)が戦前戦後を通して長い期間に渡って続けてきた仕込みの方法です。山廃は酵母を造る手法の1つですが、日本酒の酵母を造るには、大きく、生もと系酒母と速醸系酒母の2つがあり、山廃は昔ながらの製法である生もと系の代表的な酒母となります。現在主流となっている速醸系の2倍以上となる30日程の時間がかかりますが、その代り、力強く幅のある、より複雑な味わいの日本酒を造り出すことができます。
新潟県醸造試験場の設立時の関わり
君の井酒造(株)は、新潟地酒の普及にも大きな関わりを持っています。ここには、3代目の二男として生まれた田中大五郎の存在があり、当時の腐造事件をきっかけとして品質安全、安定した酒質の向上を目指すためにホーロータンクの導入に力を入れたことがあります。それは1930年に、県が所有する 醸造試験場としては全国では唯一となる新潟県醸造試験場の設立につながっています。また、昭和以降、新潟県酒の酒質向上に全力を注いだ人物として、新潟銘酒の父と呼ばれる田中哲郎の存在もあります。
田中大五郎の酒造りの遺伝子が受け継がれる
君の井酒造(株)が送り出す酒には、一般的に親しまれているものからプレミアム系のものまで数多くありますが、代表銘柄としては、普通酒、本醸造上泉、豆樽・角樽・源蔵徳利、生酒、辛口生酒、純米大吟醸山廃仕込、大吟醸、大吟醸越淡麗、純米酒があります。中でも、純米大吟醸山廃仕込は昔ながらの製法となる生もと系山廃酒母により造られた、こだわりの逸品となっています。
仕込みは、原材料を精米歩合40%まで磨き上げ、酵母造りに通常の2倍以上の時間をかけており、深い味わいを楽しむことができる酒に仕上げられています。